知的障害を持つお子さんの親御さんにとって、ご自身が亡くなられた後に残されたお子さんの事が心配という方も多いのではないかと思います。
親御さんがお亡くなりになった後に、お子さんに対して提供される障害者総合支援法に基づくサービスがあります。
このサービスは、お子さんの年齢、障害の程度、生活状況によって異なりますが、大きく分けて以下の3つの種類があります。
本記事では、親御さんがお亡くなりになった後に、お子さんに対して提供される障害者総合支援法に基づくサービスについてわかりやすくご説明したいと思います。
障害者総合支援法に基づくサービス
障害者総合支援法に基づくサービスは、障害のある人が地域で自立し、社会参加を実現することを目的に制定されたサービスです。
従来の法律では、障害の種類や程度によってサービスが分かれていたり、利用しにくい制度があったため、障害者総合支援法でそれらを統合し、より包括的な支援体制を目指したものです。
具体的には、以下のような目的があります。
- 障害のある人の尊厳を守り、基本的人権を擁護すること
- 障害のある人が地域で安心して生活できるよう、必要なサービスを提供すること
- 障害のある人が社会参加できるよう、就労や教育などの機会を確保すること
- 障害のある人の自立を支援し、社会経済活動への参加を促進すること
これらの目的を達成するために、様々なサービスが提供されています。例えば、
- 日常生活の支援: 食事、入浴、排泄などの介護、家事援助、外出支援など
- 就労支援: 就職活動のサポート、職場でのトレーニング、職場適応など
- 精神的なサポート: 相談支援、カウンセリングなど
- 医療的なケア: 訪問看護、訪問診療、リハビリテーションなど
これらのサービスを利用するには、市区町村の窓口に申請し、障害支援区分の認定を受ける必要があります。
認定された区分に基づいて、利用できるサービスの種類や内容が決まります。
また、サービスを利用する際には、サービス等利用計画を作成する必要があります。
この計画は、利用者さんの希望や課題、目標などを踏まえて作成され、サービスの利用内容や提供方法などを具体的に定めます。
居住系のサービス
居住系サービスとは、知的障害のある方が、地域社会の中で安心して生活を送れるよう、住居と日常生活上の支援を提供するサービスです。
利用するには、市区町村の窓口に申請し、障害支援区分の認定を受ける必要があります。
認定された区分に基づいて、利用できるサービスの種類や内容が決まります。
サービスの利用には、一定の自己負担が必要となる場合があります。
障害者総合支援法に基づく居住系サービスには、主に以下の3つの種類があります。
グループホーム
グループホームは、比較的少人数で、家庭的な雰囲気の中で生活を送ることができます。
- 共同生活住居: 5~10人程度の少人数で、アパートや一軒家などで共同生活を送ります。
- 食事の提供: 栄養バランスの取れた食事が提供されます。
- 生活支援: 入浴、排泄、着替えなどの介助や、金銭管理、服薬管理などの支援を受けられます。
- 夜間支援: 夜間もスタッフが常駐し、必要な支援を提供します。
施設入所
施設入所は、重度の障害がある方や、医療的なケアが必要な方でも安心して生活することができます。
- 24時間体制のケア: 食事、入浴、排泄などの介助、健康管理、服薬管理など、24時間体制で必要なケアを受けられます。
- 生活支援: 日常生活に必要な支援を受けながら、施設内で生活します。
- リハビリテーション: 身体機能や生活能力の維持・向上のためのリハビリテーションを受けられます。
ケアホーム
ケアホームは、自立した生活を目指したい方に向いています。
- アパートなどでの一人暮らし: アパートやマンションなどで一人暮らしをしながら、自立した生活を目指します。
- 訪問による支援: 必要に応じて、スタッフが訪問し、生活支援や相談支援などを行います。
- 自立生活のサポート: 家事や金銭管理などの日常生活 skills の習得を支援します。
日中活動系のサービス
日中活動系のサービスとは、知的障害のある方が、日中、施設に通うことで、様々な活動を通して、自立生活や社会参加を促進するためのサービスです。
障害者総合支援法に基づく日中活動系のサービスには、主に以下の3つの種類があります。
生活介護
生活介護は、重度の障害がある方や、医療的なケアが必要な方でも安心して利用できます。
- 対象者: 常時介護を必要とする方
- 内容
- 食事、入浴、排泄などの介助
- レクリエーション、創作活動、生産活動など
- 日常生活 skills の習得訓練
- 目的
- 生活リズムを整え、心身の安定を図る
- 社会性やコミュニケーション能力を高める
- 余暇活動を楽しむ
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、自分のペースで作業に取り組むことができます。
- 対象者: 就労意欲はあるものの、一般企業での雇用が難しい方
- 内容
- 施設内での軽作業、農作業、清掃などの作業
- 作業能力の向上のための訓練
- 社会生活 skills の習得のための支援
- 目的
- 就労の機会を提供する
- 作業を通して、知識や能力を向上させる
- 社会参加を促進する
就労移行支援
就労移行支援は、就職に向けて、集中的にスキルを習得することができます。
- 対象者: 一般企業への就職を目指している方
- 内容
- 就労に必要な知識や能力を向上させるための訓練 (ビジネスマナー、パソコン skills など)
- 就職活動の支援 (求人情報の提供、面接対策など)
- 就職後の定着支援
- 目的
- 一般企業への就職を支援する
- 就労に必要な skills を習得する
- 就職後の職場定着を支援する
その他のサービス
居住系サービスや日中活動系サービス以外にも、知的障害のある方の生活を支える様々なサービスがあります。
主なものをいくつかご紹介します。
これらのサービスは、単独で利用される場合だけでなく、組み合わせて利用される場合もあります。
例えば、日中活動系のサービスを利用しながら、月に一度、短期入所を利用してリフレッシュを図る、といったケースも考えられます。
それぞれのサービスの特徴を理解し、ご自身の状況に合わせて、必要なサービスを組み合わせて利用していくことが大切です。
短期入所
- サービス内容: 知的障害のある方が、短期間(数日~数週間)、施設に宿泊して、日常生活上の支援やレクリエーションなどを受けるサービスです。
- 利用場面
- 家族の病気や冠婚葬祭など、家庭で一時的に介護ができない場合
- 利用者本人の気分転換やリフレッシュのため
- 施設入所を検討する際の体験利用
行動援護
- サービス内容: 外出時などに、知的障害のある方の安全確保やコミュニケーションを支援するサービスです。
- 利用場面
- 通院、買い物、余暇活動など、外出時に一人では不安な場合
- 社会参加の機会を増やし、地域での生活を支援する場合
相談支援
- サービス内容: 知的障害のある方やその家族からの相談に応じ、サービス利用に関する情報提供や助言、関係機関との連絡調整などを行うサービスです。
- 利用場面
- どのようなサービスを利用できるのか知りたい場合
- サービス利用の手続きがわからない場合
- 日常生活で困っていることがある場合
移動支援
- サービス内容: 単独では公共交通機関の利用が困難な知的障害のある方の外出を支援するサービスです。
- 利用場面
- 通院、通勤、通学、買い物など
地域移行支援
- サービス内容: 入院や施設入所していた知的障害のある方が、地域で生活するための準備や、地域での生活を支援するサービスです。
- 利用場面
- 退院後、スムーズに地域生活に移行できるように支援する場合
- 地域での生活を継続できるように、必要な支援を行う場合
まとめ
本記事では、親御さんがお亡くなりになった後に、お子さんに対して提供される障害者総合支援法に基づくサービスについて説明させていただきました。
親御さんが亡くなられた後も、お子さんが安心して生活を送れるよう、これらのサービスを適切に利用していくことが大切です。
上記以外にも、地域によっては独自のサービスを提供している場合があります。
より詳しい情報を得るためには、以下の窓口に相談することをお勧めします。
- お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口
- 各都道府県・指定都市の知的障害者更生相談所
- 障害者総合支援法相談支援事業所